ディーゼルの「重厚な力」か、ガソリンの「軽快な速さ」か?ランクル300最大の悩み、エンジン選択を徹底解剖
ランドクルーザー300系の購入を検討する際、すべてのオーナー候補が直面する最大のジレンマ。それは、3.3L V6ツインターボ・ディーゼル(FJA300W)を選ぶか、それとも3.5L V6ツインターボ・ガソリン(VJA300W)を選ぶかという、究極のエンジン選択です。
この悩みは、両者のスペックシートを比較すると、さらに深まります。
ガソリン(VJA300W)は、最高出力415馬力(PS)と、ディーゼル(FJA300W)の309馬力を100馬力以上も圧倒しています。一方で、最大トルク(タイヤを回転させる力)では、ディーゼルが700N·mという強大な数値を誇り、ガソリンの650N·mを凌駕しているのです。
この数字の矛盾が、あなたの「知りたい」という疑問の核心にあるはずです。「結局、0-100km/hの加速はどっちが速いんだ?」「街乗りでキビキビ走れるパワー感があるのは?」「高速道路での追い越し加速で比較して、本当に余裕があるのはどっちだ?」
「この記事を読めば、その長年の疑問が完全に解消されます。」
本記事は、単なる数字の比較に留まりません。市街地、高速道路、そしてランドクルーザーの本領であるオフロードといったあらゆる走行シーンを想定し、専門家の視点から、両者の「加速感」と「パワー感」という、スペックシートには表れない官能的なフィーリングの違いを徹底的に言語化します。
この記事を読み終える頃には、あなたのドライビングスタイルや使用目的に、どちらのエンジンが最適解なのか、自信を持って判断できるようになるでしょう。
結論から言えば、この2つのV6ツインターボエンジンは、“速さ”と“力強さ”の「質」が全く異なります。この記事こそが、あなたの「知りたい」に対する、最も深く、信頼できる答えです。
徹底比較!ディーゼル vs ガソリン「加速とパワー」の真実

加速・パワーで選ぶなら?あなたに最適なエンジンはこれだ
多忙な読者のために、まずは専門家としての結論から提示します。あなたの使い方によって、最適な選択は明確に異なります。
日常の運転しやすさと絶対的な走破性(トルク重視)なら
「発進時のスムーズさ」「市街地でのストップ&ゴーの容易さ」「オフロードでの極低速コントロール」を最優先するなら、「3.3Lディーゼル(FJA300W)」が最適です。
高速域の伸びと絶対的な静粛性(馬力重視)なら
「高速道路での追い越し加速の伸び」「エンジンの滑らかな回転フィール」「V8からの乗り換えでも不満のない静かさ」を最優先するなら、「3.5Lガソリン(VJA300W)」が最適です。
これは「どちらが優れている」という単純な議論ではありません。「どの領域で、どのようなパワー特性を発揮するように設計されているか」という、両者の哲学の違いです。
これから、その技術的な根拠と、シーン別の具体的な体感フィーリングの違いを徹底的に解き明かしていきます。
スペックシート上の「数字」の戦い:パワー(PS)のガソリン、トルク(N·m)のディーゼル
まずは、比較の土台となる2つの心臓部の技術的データを定義します。どちらも先代200系のV8エンジンに代わり、新開発されたV6ツインターボエンジンです。
ガソリン (VJA300W):3.5L V6ツインターボ (V35A-FTS) の技術特性
VJA300Wに搭載されるのは、レクサスのフラッグシップセダン「LS」にも採用される、先進的なガソリンエンジンV35A-FTSです。
- 最高出力: 305 kW(415 PS)/ 5,200 r.p.m
- 最大トルク: 650 N·m / 2,000-3,600 r.p.m
- 使用燃料: 無鉛プレミアムガソリン
このスペックが意味するのは、「高回転域でスポーツカー並みのパワーを発揮する」特性です。5,200回転という比較的高い領域で最大の馬力を発生させる、典型的な「パワー型」エンジンと言えます。
ディーゼル (FJA300W):3.3L V6ツインターボ (F33A-FTV) の技術特性
FJA300Wに搭載されるのは、300系のために新開発されたディーゼルエンジンF33A-FTVです。
- 最高出力: 227 kW(309 PS)/ 4,000 r.p.m
- 最大トルク: 700 N·m / 1,600-2,600 r.p.m
- 使用燃料: 軽油
このスペックの核心は、「先代のV8ディーゼルをも凌駕する強大なトルクを、極めて低い回転数で発生させる」点にあります。馬力はガソリンに劣るものの、常用域での力強さを追求した「トルク型」エンジンです。
【最重要】「馬力」と「トルク」の違いが「加速感」にどう影響するのか
この「馬力(PS)」と「トルク(N·m)」こそが、読者の皆様が最も混乱し、そして最も知りたい「加速感」と「パワー感」の違いを生み出す根源です。
トルク (N·m) とは?
- 一言でいえば、「タイヤを回転させる瞬発的な力」です。
- 重い扉を「グイッ」と押し開ける、その瞬間の力をイメージしてください。
- ディーゼルは、最大の力(700N·m)をわずか1,600rpm(アイドリングの少し上)で発生させます。これは、市街地走行で常用する回転域そのものです。
- 「これが、ディーゼル車が持つ『パワー感(力強さ)』の正体です。」
馬力 (PS) とは?
- 一言でいえば、「その力をどれだけ速く、持続して出し続けられるか(仕事率)」です。
- 「トルク(力)」と「エンジンの回転数」を掛け合わせたものが馬力です。
- 先ほどの扉を、「どれだけ速く、連続して押し続けられるか」という「持続力」と「速さ」の指標です。
- ガソリンは、高回転(5,200rpm)まで回すことで、より多くの「仕事」をこなし、結果として高い「最高速度」と「高速域での加速」を生み出します。
比較表:ランクル300系 エンジンスペック徹底比較
両者の技術的な違いを、ひと目で理解できるように表にまとめます。
| 比較項目 | 3.3L ディーゼル (FJA300W) | 3.5L ガソリン (VJA300W) |
|---|---|---|
| エンジン型式 | F33A-FTV | V35A-FTS |
| 種類 | V型6気筒IC付ツインターボ | V型6気筒IC付ツインターボ |
| 総排気量 | 3,345cc | 3,444cc |
| 最高出力 (PS) | 227kW (309PS) / 4,000rpm | 305kW (415PS) / 5,200rpm |
| 最大トルク (N·m) | 700N·m / 1,600-2,600rpm | 650N·m / 2,000-3,600rpm |
| 使用燃料 | 軽油 | 無鉛プレミアムガソリン |
| 搭載グレード | ZX, GR SPORT のみ | 全グレード (GX, AX, VX, ZX, GR SPORT) |
【シナリオ別】加速感・パワー感の「体感」比較
スペックの次は、この記事の核心である「体感フィーリング」の比較です。走行シーン別に、どちらのエンジンがどのような感覚をもたらすかを徹底解説します。
市街地(0-60km/h)のフィーリング:「ディーゼル」の圧勝
結論:街乗りでの快適性、運転のしやすさ、体感的な「パワー感」はディーゼルの圧勝です。
ディーゼル (FJA300W):
市街地走行の99%は、2,500rpm以下で完結します。ディーゼルは、まさにその最も美味しい領域(1,600-2,600rpm)で最大トルク700N·mを発生させ続けます。
フィーリング:
- 「アクセルペダルに軽く足を乗せるだけで、2.5トンを超える巨体がまるで高級セダンのように、静かに、しかし力強く発進します。」これが専門家やオーナーの言う「ドライバビリティ(運転のしやすさ)」の正体です。ストップ&ゴーが続く日本の道路環境において、この「アクセル操作の少なさ」が疲労の少なさに直結します。
ガソリン (VJA300W):
ガソリンも650N·mと十分すぎるトルクを持ちますが、その発生回転数は2,000rpmから。ディーゼルの1,600rpmとのわずか400rpmの差が、体感として現れます。
フィーリング:
- ディーゼルの「グイッ」と出る感覚に比べ、発進時にわずかな「タメ」を感じるか、同等の加速を得るためにより深くアクセルを踏み込む必要があります。もちろん絶対的には強力ですが、ディーゼルを知ってしまうと、市街地では「ディーゼルの方がパワフルだ」と感じるでしょう。
高速道路(80-120km/h)のフィーリング:「ガソリン」の独壇場
結論:高速道路での合流や追い越し加速(加速の伸び)は、ガソリンの独壇場です。
ガソリン (VJA300W):
ここからは「トルク」よりも「馬力」が問われる領域です。ガソリンは415PSという、ディーゼルを100PS以上引き離すパワーを持っています。
フィーリング:
- 「高速の合流車線や、80km/hからの追い越し加速。ここからがガソリンの本領発揮です。415PSのパワーが5,200rpmまで淀みなく吹け上がり、背中を押されるような『伸びやかな加速』が法廷速度域を遥かに超えるまで続きます。」これはまさにスポーツカーの感覚です。
ディーゼル (FJA300W):
ディーゼルも700N·mのトルクで力強く加速しますが、4,000rpmを超えると馬力(309PS)の限界が見え始め、ガソリン車のような「もう一段階の伸び」は感じられません。
フィーリング:
- 日本の高速道路で不満を感じることは絶対にありません。しかし、ガソリン車と隣り合わせで加速比較すれば、その「加速の持続力」において明確な差が出ます。
オフロード・登坂路の「パワー感」:「ディーゼル」の本領発揮
結論:ランクルの本質が問われる過酷なシーンでは、ディーゼルの「パワー」がガソリンを圧倒します。
ランドクルーザーの使命は「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」であることです。そして、オフロードや急な登坂路では、ガソリンの415PSは、時に「宝の持ち腐れ」、あるいは「邪魔」にさえなります。
なぜパワー(馬力)が邪魔になるのか?
オフロード(例:岩場、ぬかるみ)で必要なのは「速さ(馬力)」ではありません。「速さ」はタイヤの空転(ホイールスピン)を招き、スタック(立ち往生)の最大の原因となります。
本当に必要なのは、タイヤがスリップする寸前の、極めて低い回転数で、最大の「力(トルク)」を「制御(コントロール)」しながら路面に伝える能力です。
ディーゼル (FJA300W):
ディーゼルは、クリープ走行に近い1,600rpmという極低回転で最大トルク700N·mを発生させます。
フィーリング:
- 「これにより、タイヤを空転させることなく、岩場やぬかるみを『ジワリ、ジワリ』と確実に掴み、乗り越えることが可能です。これこそが、ランクルがランクルたる所以の『真のパワー』です。」
ガソリン (VJA300W):
ガソリンは、2,000rpmまで回さないと最大トルク(650N·m)が出ません。
フィーリング:
- 1,000rpm~1,500rpmといった最も重要な「クロール(這うような)走行」領域において、ディーゼルよりも力が弱く、トルクを引き出すためにより多くアクセルを踏む必要があります。これがデリケートな操作を難しくし、ホイールスピンのリスクを高めます。
牽引(トレーラー・ヒッチメンバー)時のパワー感
オフロードと同様のロジックが当てはまります。静止状態から重いトレーラーやボートを引く「発進時」の負荷は、低回転トルクに優れるディーゼル(FJA300W)が圧倒的に有利です。エンジンに余計な負荷をかけず、スムーズに牽引を開始できます。
フィーリングと官能評価:五感で比べる「加速」の違い
パワーや加速は、数字だけでなく「音」や「振動」といった五感にも影響します。
エンジン音と振動:ガソリンの「絶対的静粛性」 vs ディーゼルの「重厚な鼓動感」
まず大前提として、どちらのエンジンも専門家から「スムーズかつ静粛性も高い」と評価されており、高級SUVにふさわしいレベルにあります。
ガソリン (VJA300W):
レクサスLSにも搭載されるV35A-FTSは、“無音”と表現しても過言ではないほどの静粛性と、V6エンジン特有の滑らかな回転フィールを誇ります。
「先代200系のV8から乗り換えても、その上質なフィーリングに不満を感じることはないでしょう。」
ディーゼル (FJA300W):
F33A-FTVも、先代プラド(1GD)のようないわゆる「カラカラ音」とは無縁です。
しかし、ガソリンと比較すれば、アイドリング時や急加速時に「グォー」というディーゼル特有の重厚なビート(鼓動感)がキャビンに伝わってきます。
「これを『頼もしいパワーの証』と捉えるか、『高級車にふさわしくないノイズ』と捉えるかで、オーナーの評価は分かれます。」
10速ATとのマッチングが生むフィーリングの差
両車ともDirect Shift-10AT(10速オートマチックトランスミッション)を搭載していますが、エンジンの特性に合わせてその「振る舞い」が異なります。
ディーゼル (FJA300W):
1,600〜2,600rpmという、狭くも強力なトルクバンド(美味しい領域)を外さないよう、10速ATが矢継ぎ早にシフトアップしていきます。
フィーリング:
- 「まるで途切れることのない一つの強大な力(トルク)の波に乗って加速していくような、独特の『重厚な加速感』」を演出します。
ガソリン (VJA300W):
2,000〜3,600rpmという、ディーゼルよりも広いトルクバンドを持ちます。
フィーリング:
- 10速ATは一つのギアで「引っ張る」時間が長くなり、高回転までスムーズに回るエンジン特性と相まって、「どこまでも伸びていくような『軽快な加速感』」をもたらします。
【重要】「加速とパワー」以外の決定的な違い
ランクル300系のエンジン選択は、「加速とパワー」だけで決めることはできません。むしろ、ここから解説する「燃費」「手間」「価格」こそが、あなたのカーライフを左右する決定的な要因となります。
この記事の焦点は「加速とパワー」であるため、ここでは各項目の「結論」と、詳細を解説した「専門記事」へのご案内に留めます。
燃費性能とランニングコスト(燃料代)
パワーや加速を求めれば、当然「燃費」という代償が伴います。特にガソリン(VJA300W)の市街地実燃費は「リッター3km台」に落ち込むこともある一方、ディーゼル(FJA300W)は「7.0~8.5km/L」と安定しています。この「燃費」と「年間の燃料代コスト」という、もう一つの重要な比較については、以下の記事で徹底的に分析しています。


AdBlue(尿素水)の有無
ディーゼル(FJA300W)の圧倒的なパワー感と経済性には、一つだけガソリン車にはない「手間」が伴います。それがAdBlue(アドブルー)と呼ばれる尿素水の補充です。
300系のディーゼル車は、約10,000km〜14,000km走行ごとに、このAdBlueを補充する必要があります。このアドブルーの具体的な補充頻度や費用については、こちらの記事が専門的に解説しています。

車両価格と選択できるグレードの制約
最後に、最大の制約です。「ディーゼルのパワー感が欲しい」と決めても、誰もが選べるわけではありません。
ディーゼルエンジン(FJA300W)は、車両価格が高価な上級グレードの「ZX」と「GR SPORT」でしか選択できません。
ガソリン車(VJA300W)は、エントリーのGXから最上級のGR SPORTまで、すべてのグレードで選択可能です。このグレード戦略が、あなたの予算や必要な装備、そして年間の維持費全体にどう影響するかは、以下の総合ガイド記事で必ずご確認ください。






ランクル300系のディーゼルとガソリンに関するQ&A

本文で触れきれなかった、読者の皆様が抱きがちな細かい疑問について、Q&A形式で10個お答えします。
まとめ:ランクル300系 ディーゼル(FJA300W)の加速とパワー感をガソリン(VJA300W)と比較で賢い選択を

本記事では、ランドクルーザー300系のガソリン (VJA300W) とディーゼル (FJA300W) の「加速」と「パワー」という、最も悩ましいテーマについて徹底的に比較・分析しました。
要点の振り返り:
ガソリン (415 PS / 650 N·m):
高速道路での追い越し加速など、高回転域での「速さ」が魅力。フィーリングは極めてスムーズで静粛。
ディーゼル (309 PS / 700 N·m):
市街地での発進やオフロードなど、低回転域での「力強さ(トルク)」が魅力。実用域での運転が非常に楽。
「馬力のガソリン」と「トルクのディーゼル」というスペックシート上の数字が、実際の走行シーンでどのような「体感差」になるか、ご理解いただけたはずです。
「どちらが優れている」のではなく、「得意なステージが全く異なる」ことが核心です。
この分析を踏まえ、あなたのための「賢い選択」を最後に後押しします。
「ランクルは欲しいが、オフロードには行かず、高速での快適性や静粛性を最優先したい」という方にはガソリン(VJA300W)が賢い選択です。
「ランクルの本質である力強い走り、実用域での運転のしやすさ、そして経済性も重視したい」という方には、ディーゼル(FJA300W)が賢い選択となります。
この記事で得た知識を基に、ぜひあなたのライフスタイルに完璧にマッチした、最高のランドクルーザーへの第一歩を踏み出してください。
引用文献
- ランドクルーザー300のエンジンスペック[3BA-VJA300W-GNUZZ]3.5・4WD・ZX・7人乗・10AT (121996) – Spec Tank
https://spectank.jp/eng/001121996.html - ランドクルーザー300のエンジンスペック[3BA-VJA300W-GNUSZ]3.5・4WD・GR SPORT・7人乗・10AT (121997) – Spec Tank
https://spectank.jp/eng/001121997.html - ランドクルーザー300に欠点・デメリットはあるか?後悔しないため …
https://www.junku.com/shinsha-useful/landcruiser-ketten.html - 【ランクル300試乗レビュー】ガソリンとディーゼルを比較! – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=PmCa9qEW9ns - ランクル300系【実燃費】オーナーが計測:ガソリン/ディーゼルの …
https://daichi-no-compass.com/lc300-real-fuel-economy/ - ランクル300系【ディーゼル】アドブルー(AdBlue)の補充頻度と …
https://daichi-no-compass.com/lc300-adblue-cost/

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