ランクル300系、究極の選択。ガソリンか、ディーゼルか。
パワー、静粛性、そして「年間コスト」…どちらが賢い選択か？
ランドクルーザー300系（LC300）の購入を検討する際、すべての潜在的オーナーが直面する最大の岐路、それがガソリンモデルとディーゼルモデルの選択です。「キング・オブ・オフローダー」としての威厳を手に入れる決意は固まったものの、心臓部であるパワートレインの選択には、多くの悩みが伴います。
- ガソリン（VJA300W）の魅力は、その圧倒的なパワーと静粛性です。415PSという大出力と、V6ツインターボならではの滑らかで静かな回転フィーリングは、高級車としての快適性を最大限に高めてくれます。しかし、同時に「燃費が悪いのでは？」「高価なハイオク指定で、年間コストがとんでもないことになるのでは？」という不安が常につきまといます。
- 一方のディーゼル（FJA300W）は、700N·mという強大なトルクと、燃費の良さが光ります。しかし、「車両価格がガソリンより数十万円高い」「アドブルー（AdBlue）の補充という未知のコストと手間が不安」「ディーゼル特有の音や振動は？」といった懸念が、その決断を鈍らせます。
パワー、フィーリング、初期費用、そして年間コスト。これらの要素が複雑に絡み合い、「自分にとって本当に賢い選択はどちらなのか？」という問いに対する明確な答えを見つけ出せずにいるのではないでしょうか。
この記事があなたの疑問を「数字」で完全解消します
この記事は、単なる印象論やカタログスペックの羅列ではありません。あなたのその「知りたい」という検索意図に、客観的な「数字」で完全に応えるための徹底分析レポートです。
この記事を最後まで読めば、以下の具体的な事実がすべて明らかになります。
- ガソリン車とディーゼル車のリアルな実燃費（オーナー報告に基づく平均値）。
- 2025年現在の最新燃料価格とAdBlueコストに基づいた、正確な年間走行コストの差額。
- あなたの年間走行距離（5,000km / 10,000km / 20,000km）に応じた、具体的な年間節約金額。
- ディーゼル車の高い初期費用を、燃料代の差額で「何年で元が取れるか」という損益分岐点。
あなたはこの記事を読み終える頃には、ご自身のライフスタイルにとってどちらが経済的に賢い選択であるかを、データに基づいて自信を持って判断できるようになります。
実燃費と燃料価格から「損益分岐点」まで徹底シミュレーション
本稿では、トヨタの公式技術文書、実際のオーナーから収集した数千件の燃費報告データ、そして2025年現在の市場価格を組み合わせて、ランクル300系のガソリン vs ディーゼルの経済性を徹底的にシミュレーションします。
「年間1万km走行した場合、コスト差は年間いくらになるのか？」
「ディーゼルの初期費用（約30万円）は、何年で回収できるのか？」
この最も重要な問いに対する「解」を、今から明らかにします。
年間1万kmなら「ディーゼル」が「約8万円」経済的
緻密な分析に入る前に、本記事の核心的な結論からお伝えします。
年間10,000km走行する平均的なドライバーの場合、燃料代とAdBlueコストをすべて含めた年間ランニングコストは、ディーゼルモデルの方がガソリンモデルよりも「年間 約80,805円」安くなります。
この結論は、以下の最新データに基づき算出されています。
ガソリン車（年間10,000km）のコスト:
(10,000 km / 実燃費 7.05 km/L) × ハイオク 177 円/L = 251,063 円
ディーゼル車（年間10,000km）のコスト:
(10,000 km / 実燃費 8.61 km/L) × 軽油 145 円/L = 168,408 円
(10,000 km / AdBlue消費 1,000 km/L) × AdBlue 185 円/L = 1,850 円
合計: 170,258 円
ガソリン vs ディーゼル コスト比較の早見表
この分析結果の全体像を、以下の早見表にまとめます。
| 比較項目 | 3.5L ガソリン (VJA300W) | 3.3L ディーゼル (FJA300W) | 備考（参照データ） |
|---|---|---|---|
| エンジン | V35A-FTS (3.5L V6ツインターボ) | F33A-FTV (3.3L V6ツインターボ) | |
| 最高出力 | 305 kW (415 PS) | 227 kW (309 PS) | ガソリンがパワーで優位 |
| 最大トルク | 650 N·m | 700 N·m | ディーゼルがトルクで優位 |
| 使用燃料 | ハイオクガソリン | 軽油 | |
| 燃料単価目安 | 177 円/L | 145 円/L | ディーゼルが約18%安価 |
| カタログ燃費 (WLTC) | 7.9 km/L | 9.7 km/L | ディーゼルが約22.8%優位 |
| 実燃費 (オーナー報告) | 約 7.05 km/L | 約 8.61 km/L | ディーゼルが約22.1%優位 |
| 特有コスト | (特になし) | AdBlue（アドブルー） | |
| 年間コスト (1万km走行) | 約 251,063 円 | 約 170,258 円 | ディーゼルが年間 80,805 円安価 |
| 走行フィーリング | 静粛性が高い・高回転までスムーズ | 低速トルクが強大・力強い加速 | |
| おすすめな人 | ・走行距離が短い ・静粛性を最優先する ・輸出目的のリセールを狙う | ・走行距離が長い（年間1万km以上） ・ランニングコストを重視する ・力強いトルク感を求める |
コスト以外の「総維持費」の全体像
この記事では「燃料コスト」という側面に焦点を当てていますが、ランクル300系を所有するには、当然ながら税金（自動車税・重量税）や任意保険料、メンテナンス費用も考慮に入れる必要があります。
年間の燃料コストを比較しましたが、税金や保険料を含めた「総維持費」は、購入後の生活設計においてさらに重要です。ランクル300系の維持費の全体像については、以下の記事で詳細に解説しています。
基本スペック比較：パワーのガソリン vs トルクのディーゼル
年間のコスト差を生み出す根本的な要因は、両エンジンの特性の違いにあります。まずは、それぞれの心臓部の公式スペックを詳細に比較し、その「素性」を理解することから始めます。
3.5L V6ガソリンエンジン（V35A-FTS）の性能
ランクル300系のガソリンモデルが搭載するのは、レクサスLS500などにも採用される先進のV6ツインターボエンジンです。
- エンジン型式: V35A-FTS
- 種類: V型6気筒 ツインターボ
- 総排気量: 3,444 cc
- 最高出力: 305 kW (415 PS) / 5,200 rpm
- 最大トルク: 650 N·m / 2,000 – 3,600 rpm
このエンジンのアイデンティティは、「圧倒的な最高出力」と「静粛性」にあります。415PSという数値は、先代200系のV8エンジンを凌駕し、「キング・オブ・4WD」にふさわしい余裕のパワーを提供します。また、ガソリンエンジン特有の滑らかな回転フィールと静粛性の高さは、オンロードでの快適性を最重要視するドライバーにとって大きな魅力となります。
3.3L V6ディーゼルエンジン（F33A-FTV）の性能
一方、日本市場待望の復活となったディーゼルモデルは、ランクル300系のために新開発されたV6ツインターボエンジンを搭載しています。
- エンジン型式: F33A-FTV
- 種類: V型6気筒 ツインターボ
- 総排気量: 3,345 cc
- 最高出力: 227 kW (309 PS) / 4,000 rpm
- 最大トルク: 700 N·m / 1,600 – 2,600 rpm
このエンジンのアイデンティティは、「強大な低速トルク」と「経済性」です。注目すべきは700N·mという最大トルクの数値だけでなく、それをわずか「1,600rpm」という低回転域から発生させる点です。これは、アクセルを踏んだ瞬間から巨体を軽々と押し出す、力強く「タフな」走行フィールを意味します。オフロード走破性はもちろん、街中でのストップアンドゴーや高速道路の合流でも、その恩恵は絶大です。
【表】エンジン性能スペック一覧
両エンジンの特性の違いを、以下の表で視覚的に比較します。
| 項目 | 3.5L ガソリン (V35A-FTS) | 3.3L ディーゼル (F33A-FTV) | 差 |
|---|---|---|---|
| エンジン型式 | V35A-FTS | F33A-FTV | |
| 種類 | V型6気筒 ツインターボ | V型6気筒 ツインターボ | |
| 総排気量 | 3,444 cc | 3,345 cc | ガソリンが 99cc 大きい |
| 最高出力 | 305 kW (415 PS) | 227 kW (309 PS) | ガソリン +106 PS |
| 最大トルク | 650 N·m | 700 N·m | ディーゼル +50 N·m |
| 使用燃料 | ハイオクガソリン | 軽油 |
走行フィーリングの「生の声」
スペックの差は明らかですが、この数字が実際の「加速感」や「パワー感」としてどう体感できるのかは、また別の話です。両エンジンのフィーリングの違いをより深く知りたい方のために、試乗レビューをまとめた記事をご用意しています。
燃費の真実：カタログ燃費と「実燃費」のギャップを暴く
年間のコストを算出するために最も重要な要素が「燃費」です。ここでは、メーカーが公表する「カタログ燃費」と、オーナーが実際に記録した「実燃費」を比較し、信頼できる分析の土台を築きます。
① カタログ燃費（WLTCモード）の比較
まず、公式データを見てみましょう。国土交通省の審査値であるWLTCモード燃費では、以下の数値が公表されています。
- 3.5L ガソリン (VJA300W): 7.9 km/L
- 3.3L ディーゼル (FJA300W): 9.7 km/L
カタログ値の時点で、ディーゼル車はガソリン車よりも約22.8%も燃費が良いことが示されています。
② オーナー報告から見る「実燃費」のリアル
では、実際のオーナーが記録した「実燃費」はどうでしょうか。国内最大級のカーSNSである「みんカラ」に寄せられた、多数のオーナーによる実燃費報告の平均値は、以下の通りです。
- 3.5L ガソリン (VJA300W): 平均実燃費 7.05 km/L
- 3.3L ディーゼル (FJA300W): 平均実燃費 8.61 km/L
この実燃費データでも、ディーゼル車はガソリン車よりも約22.1%優位という結果が出ており、カタログ値の差が現実世界でも裏付けられています。
特筆すべきは、ディーゼルオーナーの中には、カタログ値(9.7 km/L)を上回る10.1 km/Lといった優秀な平均実燃費を記録している例も存在することです。これは、ディーゼルエンジンの実用燃費が非常に優れていることを示しています。
【表】カタログ燃費 vs 実燃費 達成率の比較
ここで、カタログ燃費に対して実燃費がどれくらいの割合（達成率）なのかを計算し、メーカー公表値の「信頼性」を検証します。
| 項目 | 3.5L ガソリン (VJA300W) | 3.3L ディーゼル (FJA300W) |
|---|---|---|
| カタログ燃費 (A) | 7.9 km/L | 9.7 km/L |
| 平均実燃費 (B) | 7.05 km/L | 8.61 km/L |
| 達成率 (B ÷ A) | 89.2% | 88.8% |
この比較から、非常に興味深い事実が浮かび上がります。
ガソリン車もディーゼル車も、実燃費はカタログ値の約89%という、ほぼ同一の達成率を示しています。
これは、「ディーゼルの方が燃費達成率が低い（あるいはその逆）」といった偏りがなく、トヨタが公表しているWLTCモード燃費は、両エンジン間の燃費差（約22%）を非常に正確に反映していることを意味します。この事実は、これから行うコストシミュレーションの信頼性を強力に裏付けるものです。
オーナーの計測データをさらに詳しく
この記事ではシミュレーションのために平均実燃費を使用しましたが、オーナーによる「街乗り」「高速道路」など、シーン別の詳細な実燃費データに興味がある方は、こちらの記事も併せてお読みください。
【本題】年間コストシミュレーション：本当に得なのはどっちだ？
信頼できる「実燃費」データが揃ったところで、いよいよ本題である年間コストのシミュレーションを実行します。走行距離別に「ガソリン車」と「ディーゼル車」の年間コストを徹底的に比較します。
シミュレーションの前提条件（2025年最新）
本シミュレーションの信頼性を担保するため、前提条件を以下のように明確に定義します。
実燃費（オーナー報告平均値）:
- ガソリン車: 7.05 km/L
- ディーゼル車: 8.61 km/L
燃料単価（2025年11月 全国平均価格）:
- ハイオクガソリン: 177 円/L
- 軽油: 145 円/L
AdBlue（アドブルー）コスト:
- 消費量: 1,000 km / 1L （平均的な消費率）
- 単価: 185 円/L （ネット通販での10Lパッケージ価格 1,850円を基準）
① 年間燃料代シミュレーション
まずは、純粋な「燃料代」を走行距離別に算出します。
計算式: (走行距離 ÷ 実燃費) × 燃料単価
ガソリン車 (VJA300W) の年間燃料代
年間 5,000 km走行の場合:
(5,000 km / 7.05 km/L) × 177 円/L = 約 125,531 円
年間 10,000 km走行の場合:
(10,000 km / 7.05 km/L) × 177 円/L = 約 251,063 円
年間 20,000 km走行の場合:
(20,000 km / 7.05 km/L) × 177 円/L = 約 502,127 円
ディーゼル車 (FJA300W) の年間燃料代
年間 5,000 km走行の場合:
(5,000 km / 8.61 km/L) × 145 円/L = 約 84,204 円
年間 10,000 km走行の場合:
(10,000 km / 8.61 km/L) × 145 円/L = 約 168,408 円
年間 20,000 km走行の場合:
(20,000 km / 8.61 km/L) × 145 円/L = 約 336,817 円
② ディーゼル特有のコスト：AdBlue（アドブルー）
ディーゼル車には、燃料代のほかに「AdBlue（高品位尿素水）」の補充コストが年間でかかります。これは、排出ガスをクリーンにするために不可欠な消耗品です。
AdBlueの補充頻度と年間費用
計算式:
(走行距離 ÷ 1,000 km/L) × 185 円/L
年間 5,000 km走行の場合:
(5,000 km / 1,000 km/L) × 185 円/L = 925 円
年間 10,000 km走行の場合:
(10,000 km / 1,000 km/L) × 185 円/L = 1,850 円
年間 20,000 km走行の場合:
(20,000 km / 1,000 km/L) × 185 円/L = 3,700 円
この試算から明らかなように、AdBlueの金銭的コストは非常に軽微です。年間1万km走行しても、その費用は2,000円にも満たないことがわかります。
ただし、コストは金銭面だけではありません。AdBlueには「手間」と「リスク」という、もう一つの側面があります。
手間のコスト:
AdBlueが残り2,400km走行分を切ると、メーターに警告灯が点灯します。オーナーは、ディーラーやガソリンスタンド、あるいは自身でAdBlueを補充する（10Lや20Lのタンクから注ぎ入れる）という「手間」が発生します。
リスクのコスト:
「走行可能距離 0km」の警告を無視してAdBlueが完全に切れた場合、走行中にエンジンが停止することはありませんが、一度エンジンを切ると、AdBlueを補充するまで二度と再始動できなくなります。
AdBlueに関するより詳細な情報（補充方法や警告灯）については、以下の記事を参照してください。
③【年間総コスト比較】燃料代＋AdBlue代
それでは、ガソリン車の「燃料代」と、ディーゼル車の「燃料代＋AdBlue代」の年間総ランニングコストを比較します。これが、この記事の最終的な答えとなります。
| 走行距離 | 3.5L ガソリン (燃料代) | 3.3L ディーゼル (燃料代 + AdBlue代) | コスト差額（ディーゼルが得） |
|---|---|---|---|
| 年間 5,000 km | 125,531 円 | 85,129 円 (84,204 + 925) | 40,402 円 |
| 年間 10,000 km | 251,063 円 | 170,258 円 (168,408 + 1,850) | 80,805 円 |
| 年間 20,000 km | 502,127 円 | 340,517 円 (336,817 + 3,700) | 161,610 円 |
分析：乗れば乗るほどディーゼルの経済性が加速する
このシミュレーション結果（表4）は、ランクル300系のガソリン vs ディーゼルの経済性について、明確な結論を示しています。
年間5,000km（ちょい乗りメイン）のドライバー:
この場合でも、ディーゼルの方が年間約4万円安くなります。
年間10,000km（平均的）のドライバー:
コスト差は年間約8万円に開きます。月額に換算すると、ディーゼルはガソリンよりも毎月約6,700円もランニングコストが安い計算になります。
年間20,000km（長距離・ヘビー）のドライバー:
コスト差はさらに倍増し、年間約16万円以上もディーゼルが経済的になります。
結論として、「ランクル300系は、乗れば乗るほどディーゼルの経済的優位性が加速する」ことが、データによって証明されました。
初期費用（車両価格）の差は「何年で元が取れる」か？
ディーゼルが経済的であることは分かりましたが、もう一つの重要な問いが残っています。「ガソリン車よりも約30万円高いディーゼル車の初期費用は、何年で元が取れるのか？」という損益分岐点の計算です。
車両価格差の算出（ZX・7人乗りで比較）:
ガソリン ZX (7人乗り): 7,436,000 円
ディーゼル ZX (7人乗り): 7,736,300 円
価格差: 300,300 円 （ディーゼルの方が高い）
損益分岐点の計算:
初期価格差 300,300 円 ÷ 年間コスト差額
年間 5,000 km走行の場合:
300,300 円 ÷ 40,402 円/年 = 約 7.43 年
年間 10,000 km走行の場合:
300,300 円 ÷ 80,805 円/年 = 約 3.72 年
年間 20,000 km走行の場合:
300,300 円 ÷ 161,610 円/年 = 約 1.86 年
この分析結果は、あなたの選択を決定づけるものになるでしょう。
「平均的なドライバー（年間1万km）であれば、わずか3.7年でディーゼル車の初期費用を回収できる」のです。
「長距離ドライバー（年間2万km）であれば、2年足らずで元が取れてしまいます。」
一方で、「走行距離が極端に短い（年間5千km）ドライバーであれば、元を取るのに7年以上かかる」ため、初期費用が安いガソリン車を選ぶ方が合理的である可能性も示唆しています。
燃費・コスト以外の決定打：メリットとデメリットの最終比較
ただし、クルマ選びは「コスト」だけで決まるものではありません。ランクル300系のような「相棒」を選ぶなら、フィーリングやリセールバリューといった定性的な側面も極めて重要です。
コスト計算では見えてこない、両者のメリットとデメリットを比較します。
| 項目 | 3.5L ガソリン (VJA300W) | 3.3L ディーゼル (FJA300W) |
|---|---|---|
| メリット | ・圧倒的な静粛性。高級車としての快適性が高い。 ・高回転までスムーズに回るパワーフィーリング（415 PS）。 ・異常なリセールバリュー。輸出需要（中東など）により、投資対象となっている。 | ・発進時から効く強大なトルク（700 N·m）による力強い走り。 ・ランニングコスト（燃料代）が圧倒的に安い（本記事の分析）。 ・燃料が安いため、長距離走行での精神的なストレスが少ない。 |
| デメリット | ・ランニングコストが非常に高い（本記事の分析）。 ・高価なハイオクガソリンが必須。 | ・ガソリン車には及ばないエンジン音や振動。 ・AdBlue（アドブルー）の補充という手間が発生する。 ・車両本体価格（初期費用）が約30万円高い。 |
リセールバリューの逆転現象：あなたは「ユーザー」か「投資家」か
ここで、ランクル300系特有の、最も重要な「パラドックス」について解説しなければなりません。
本記事の分析:
「長く乗るユーザー」にとっては、ランニングコストが安く、3.7年で元が取れるディーゼル車が経済的に合理的である。
市場の現実:
売却時のリセールバリューは、ガソリン車（特にZX）の方がディーゼル車よりも圧倒的に高い（例：ガソリンZX残価率161.7% vs ディーゼルGR-S残価率117.3%）。
なぜ、ランニングコストが高いガソリン車の方が、リセールが高いのでしょうか？
答えは「輸出需要」です。
ランクル300の中古車は、その多くが中東やアジア諸国へ輸出されます。それらの国々では、ガソリンが安価であることや、ディーゼル特有のメンテナンス（DPFやAdBlue）が敬遠されることから、「3.5Lガソリンエンジン」の需要が極めて高いのです。
この事実は、あなたの選択肢を「ガソリンか、ディーゼルか」から、「あなたは長期ユーザーか、短期投資家か」という問いに変えます。
長期ユーザー（実用派）:
「このランクルを5年、10年と長く乗り潰す」という方。
→ ディーゼル一択です。リセールバリューの差は長期保有によって小さくなり、それ以上に年間の燃料代の安さ（年間8万円〜16万円）というメリットが、あなたの家計を長期間にわたって支え続けます。
短期投資家（リセール派）:
「運良く新車抽選に当選し、3年後の初回車検で売却する」という方。
→ ガソリン（特にZX）一択です。3年間で節約できる燃料代（約24万円）など比較にならないほどの売却益（数百万円レベルの可能性）が、ガソリン車を選ぶことで得られる可能性があるためです。
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- ガソリン車はハイオク専用ですか？レギュラーは使えませんか？
-
はい。V35A-FTSは高性能ツインターボエンジンのため、ハイオクガソリン専用です。レギュラーガソリンの使用は、エンジンの性能を著しく低下させるだけでなく、最悪の場合、故障の原因となるため絶対に使用できません。
- ディーゼル車のAdBlue（アドブルー）が切れるとどうなりますか？
-
走行中に突然エンジンが止まることはありません。しかし、警告灯が点灯し、走行可能距離が0kmになった後に一度エンジンを切ると、AdBlueを補充するまで二度と再始動できなくなります。これは排出ガス規制（SCRシステム）のための仕様です。
- 街乗り（短距離）ばかりだと、ディーゼルはDPFが詰まりやすいですか？
-
はい、そのリスクはガソリン車より高くなります。ディーゼルエンジンには、ススを捕集するDPF（Diesel Particulate Filter）が装着されています。このススは通常、走行中の排気熱で自動的に燃焼（再生）されますが、極端な短距離走行ばかりだと再生が間に合わず、DPFが詰まり、警告灯が点灯する可能性があります。ディーゼル車を選ぶ場合は、月に1度でも30分程度の中速〜高速走行をすることが推奨されます。
- 高速道路での燃費はどれくらい伸びますか？
-
大きく伸びます。オーナー報告では、ディーゼル車（ZX）で10.1km/Lという、カタログ値(9.7km/L)を超える優秀な実燃費を記録している例もあります。ガソリン車も同様に、高速巡航では燃費が大きく伸びる傾向にあります。
- 燃料タンク容量と航続距離はどれくらい違いますか？
-
燃料タンク容量は、両モデルとも80Lで共通です。本記事で算出した実燃費（ガソリン: 7.05km/L, ディーゼル: 8.61km/L）で計算すると、満タン時の理論的な航続距離は以下のようになります。
ガソリン車: 80L × 7.05 km/L = 約 564 km
ディーゼル車: 80L × 8.61 km/L = 約 688 km
- GRスポーツとZXなど、グレードによって燃費は変わりますか？
-
メーカーが公表するWLTCモードカタログ燃費は、ガソリン・ディーゼルともに全グレードで共通です（例：ガソリン7.9km/L、ディーゼル9.7km/L）。ただし、GRスポーツはオフロード性能重視のタイヤ、ZXは20インチの大径オンロードタイヤを標準装備しており、タイヤの転がり抵抗の違いによって、実燃費にはわずかな差が生じる可能性はあります。
- ガソリン車のリセールが異常に高いと聞きましたが、コスト計算に含めるべきですか？
-
含めるべきです。これは最も重要な要素の一つです。
本記事のコスト計算は、あくまで「ランニングコスト（走行費用）」に絞っています。しかし、クルマの総コストは「（購入費用＋維持費）− 売却費用」で決まります。
前述の通り、輸出市場での需要により、ガソリン車（特にZX）は160%を超える異常なリセールバリューを記録しています。
「3〜4年以内に売却する（投資目的）」のであれば、ランニングコストの差を遥かに凌駕する売却益が期待できるガソリン車（ZX）が、トータルで最も「得」な選択となります。
- 税金（自動車税・重量税）はどちらが安いですか？
-
毎年の自動車税は、両車とも同じ排気量区分（ガソリン3,444cc、ディーゼル3,345cc → どちらも3.0L超～3.5L以下）のため、同額（年額57,000円）です。
しかし、購入時にかかる自動車重量税と環境性能割において、ディーゼル車は「エコカー減税」の対象となり、ガソリン車に比べて大幅に優遇されます（免税または減税）。したがって、初期費用においてはディーゼル車が有利になります。（詳細は下記記事で解説しています）
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-
トヨタディーラーでの点検時の補充が最も確実ですが、ガソリンスタンド、カー用品店（オートバックスなど）、ホームセンター、さらにはネット通販（Amazonや楽天市場など）でも簡単に購入できます。価格は変動しますが、10Lで1,800円～3,000円程度が相場です。セルフでの補充も可能で、作業自体は難しくありません。
- 年間5,000kmも乗りません。それでもディーゼルを選ぶ価値はありますか？
-
経済的な合理性だけを考えれば、難しい選択になります。本記事の試算では、年間5,000km走行の場合、初期費用30万円をペイするのに約7.4年かかります。
走行距離が極端に短い方は、
- 初期費用が約30万円安い。
- 損益分岐点までの期間が長い（7年以上）。
- DPF詰まりのリスクが低い。
- 静粛性が高い。
という4つの理由から、ガソリン車の方がトータルで合理的な選択となる可能性が高いです。ただし、ディーゼルの「低速から湧き上がるトルク感」に強い魅力を感じるのであれば、経済合理性を超えた「価値」としてディーゼルを選ぶのも、もちろん賢い選択です。
まとめ：年間コスト差は8万円。あなたの相棒は「静かなガソリン」か「力強いディーゼル」か
本稿では、ランドクルーザー300系のガソリンモデルとディーゼルモデルの燃費と年間コストについて、客観的なデータに基づき徹底的に分析しました。
要点の振り返り
実燃費:
ガソリン車（7.05km/L）に対し、ディーゼル車（8.61km/L）が約22%優位でした。
燃料単価:
ハイオク（177円）に対し、軽油（145円）が約18%安価でした。
年間総コスト:
年間1万km走行時、ディーゼルはAdBlue代を含めても、ガソリンより年間約80,805円経済的であると結論付けられました。
損益分岐点:
ディーゼル車の高い車両価格（約30万円）は、年間1万km走行の平均的なドライバーであれば約3.7年で回収可能であることが判明しました。
悩みの解決確認
この記事を読む前にあなたが抱えていた「ガソリンとディーゼル、年間コストはいくら違うのか？」という漠然とした疑問は、今や具体的な「数字」によって解消されたはずです。
「年間80,805円」— 月額にして約6,700円。
この差額をどう捉えるかが、あなたの最終的な選択を決定します。
そして、ランクル300系特有の「リセールバリューの逆転現象」を考慮することで、あなたの「オーナーとしてのタイプ」に応じた最適な解が見えてきました。
「長期ユーザー」の実用派
→ 年間8万円のコストメリットと強大なトルクを享受できるディーゼルが合理的。
「短期売却」の投資派
→ 異常な輸出需要の恩恵を受けるガソリン（ZX）が合理的。
「近距離・静粛性」重視派
→ DPFリスクを避け、初期費用と静粛性を取るガソリンが合理的。
最高のランドクルーザーライフへの第一歩
月額約6,700円を「高い」と捉え、ガソリン車の静粛性とパワーにその価値を見出すか。
月額約6,700円を「節約」と捉え、ディーゼル車のトルクフルな走りと経済性を手に入れるか。
「どちらが優れているか」ではなく、「どちらがあなたのライフスタイルに合っているか」。
その答えは、すでにご自身の中にあるはずです。
この記事で得た具体的な「数字」というコンパスを手に、ぜひあなたにとって最高のランドクルーザーライフへの第一歩を踏み出してください。
引用文献
- 【ランクル300試乗レビュー】ガソリンとディーゼルを比較！ – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=PmCa9qEW9ns - ランドクルーザー300の燃費 (給油情報 1,590件) – みんカラ
https://minkara.carview.co.jp/car/toyota/landcruiser_300/nenpi/ - トヨタ ランドクルーザー300系の新車グレード一覧（1ページ目） – 【公式】スズキ販売宇都宮東
https://www.suzuki-hanbai-utsunomiya-higashi.jp/newcar/newcar_gradesearch.php?maker_list=00100&model_list=09301 - 【2025年11月】AdBlue（添加剤）のおすすめ人気ランキング – Yahoo!ショッピング
https://shopping.yahoo.co.jp/searchranking/AdBlue/74005/?rmore=1 - 【ランドクルーザー“300”】AdBlue（アドブルー）＝尿素水について教えて。 | トヨタ自動車WEBサイト
https://toyota.jp/faq/show/6403.html - ガソリン価格 都道府県平均 – e燃費
https://e-nenpi.com/gs/prefavg - 都道府県平均 ガソリン価格ランキング – 軽油 – GoGoGS
https://gogo.gs/ranking/average/2 - Toyota diesel – F33A-FTV
https://toyota-club.net/files/faq/21-07-20_faq_f33-engine_en.htm - VEHICLE CODE: iSJ Brand: TOYOTA Year – Milele
https://www.milele.com/wp-content/uploads/2021/08/LHD-Toyota-Land-Cruiser-300-VX-3.5-TT-AT-MY2022-Specs.pdf - トヨタ 新型ランドクルーザー300系（ランクル300）主要諸元表と …
https://www.namaxchang.com/article/482312953.html - ランドクルーザー300のエンジンスペック[3BA-VJA300W-GNUSZ]3.5・4WD・GR SPORT・7人乗・10AT (121997) – Spec Tank
https://spectank.jp/eng/001121997.html - Toyota engines – V35 – Dynamic Force series (V6)
https://toyota-club.net/files/faq/19-09-10_faq_df_v6_eng.htm - What the New Land Cruiser’s Engine Tells Us About the Next-Gen Toyota Tundra
https://www.thedrive.com/news/41073/what-the-new-land-cruisers-engine-tells-us-about-the-next-gen-toyota-tundra
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