今、カタログを広げながら猛烈に悩んでいるはずです。「最新の角張ったデザインが魅力の250か、それとも王者の風格漂う300か」。
「250でも十分立派じゃないか? 300万円も高い300を買う意味はあるのか?」
その迷い、痛いほど分かります。しかし、歴代ランクルで地球12周分(50万km)を走り抜けてきた私からすれば、この2台は「似て非なる乗り物」です。
もしあなたが、高速道路での圧倒的な静粛性や、踏んだ瞬間にワープするような加速感を求めているなら、250を選ぶと後悔することになります。
逆に、日本の狭い道路事情や、泥汚れを気にせず使い倒す道具感を求めるなら、300は「盗難に怯えるだけの巨大な金庫」になりかねません。
この記事では、カタログスペックには載らない「乗り味」「納期の絶望」「維持の苦労」の違いを、忖度なしの現場目線で断定します。
300万円の価格差がどこにあるのか。その真実を知ってから契約書にハンコを押してください。
この記事の要約
- エンジン格差:
V6ツインターボ(300)と直4(250)は、加速と静粛性で「別の乗り物」レベルの違いがある。 - 所有のストレス:
300はリセール最強だが、盗難リスクとサイズで日常使いに神経をすり減らす。 - 結論:
「一番いいヤツ」が欲しいなら迷わず300。道具として使い倒すなら250が正解。
ランクル300系の全貌や基本的な特徴については、下記の記事で詳しく解説しています。

ランクル300と250の決定的な違いとは?役割の定義

結論から言うと、この2台は目指しているゴールが違います。どちらが上か下かという単純な話ではありませんが、トヨタが定めた「ヒエラルキー(階級)」は残酷なほど明確に存在します。
ステーションワゴン(300)vs ライトデューティ(250)
トヨタの公式定義では、以下の通り役割が分かれています。
- ランドクルーザー300:
「ステーションワゴン」。最新技術のすべてを注ぎ込んだフラッグシップ。砂漠のロールスロイスを目指した、快適性と走破性の頂点。 - ランドクルーザー250:
「ライトデューティ(旧プラド)」。人々の生活を支える実用車。扱いやすさと堅牢さを重視した、現場の相棒。
つまり、300は「王様が乗る車」、250は「レンジャー隊員が乗る車」です。
ここを履き違えると、「250は内装がチープだ」とか「300は豪華すぎて気を使う」といった不幸なミスマッチが起きます。
プラドという名前が消えた理由
「なぜプラドではなく250なのか?」
これは、先代プラド(150系)があまりに立派になりすぎて、本家ランクル(200系)に肉薄してしまった反省と、シリーズ全体の原点回帰を狙ったものです。
しかし、中身の系譜としては間違いなく「250=プラドの正当進化版」です。
ランクル250の詳細なスペックや特徴については、下記の記事で詳しく解説しています。

300と250の比較詳細・不都合な真実

ここからは、カタログの美辞麗句を剥ぎ取り、オーナーが直面する「現実」を比較します。特にエンジン性能と内装の差は、価格差以上の開きがあります。
スペック・価格比較表
まずは数字で現実を見てみましょう。
| 項目 | ランクル300 (ZX・ディーゼル) | ランクル250 (ZX・ディーゼル) | 差の真実 |
|---|---|---|---|
| 車両価格 | 約800万円〜 | 約520万円〜(推定) | 約300万円の差 |
| エンジン | V6 3.3L ツインターボ | 直4 2.8L ターボ | ここが決定的な違い |
| 最高出力 | 309ps | 204ps | 100馬力以上の差 |
| 最大トルク | 700Nm | 500Nm | 加速の次元が違う |
| 変速機 | 10速AT | 8速AT | 滑らかさの差 |
| 全幅 | 1,980mm | 1,980mm | 実は幅は同じ(!) |
エンジン性能:V6ツインターボ vs 直4ターボ
残酷な真実をお伝えします。250のエンジンは、先代プラド(150後期)からのキャリーオーバー(流用)です。もちろん調整はされていますが、基本設計は古いままです。
対して300のエンジンは、新開発のV6ツインターボ。
アクセルを踏み込んだ瞬間、300は巨体を忘れるほどの加速を見せますが、250は「よっこいしょ」とディーゼル特有の唸り声を上げて加速します。この「余裕の差」こそが、300万円の正体です。
【実体験コラム】高速道路での冷や汗
私が250(プロトタイプ試乗)で高速の合流車線に入った時、アクセルをベタ踏みしても「グオオオ」と唸るだけで、思ったような加速が得られず、本線のトラックの手前に入るのに冷や汗をかきました。
一方、300の場合はアクセル開度30%程度で十分。会話を中断することなく、スーッと法定速度まで到達します。この「精神的な余裕」にお金を払えるかどうかが、最大の分かれ道です。
ちなみに、300系が先代の「ランクル200系」からどれほど劇的な進化を遂げたのかを知れば、その価値がより深く理解できます。

乗り心地:魔法の絨毯 vs 揺れるトラック
両車とも同じ「TNGA-F」プラットフォームを使っていますが、味付けは異なります。
- 300:
電子制御サスペンション(AVS)などが奢られ、路面の凹凸を消し去るような「ヌルヌル」した極上の乗り味。 - 250:
オフロードでの接地性を重視し、あえて路面状況を伝える設定。300に比べると、どうしてもトラック特有の「揺れ」や「突き上げ」を感じます。
内装・装備:おもてなし vs 実用性
ドアを開けた瞬間の「匂い」からして違います。
300は厚みのあるレザーとソフトパッドで覆われ、スイッチ類一つとっても「しっとり」とした操作感です。電動格納サードシートや、指紋認証スタートスイッチなど、フラッグシップならではの装備が標準です。
一方の250は、あえて「樹脂パーツ」を多用しています。これはコストカットだけでなく、汚れても拭きやすい、傷ついても交換しやすいという「道具としての機能美」です。
しかし、800万円級の高級車だと思って250に乗ると、プラスチッキーな質感にがっかりするかもしれません。
リセールバリュー vs 盗難リスクの天秤
「300を買えばリセールで儲かる」と安易に考えていませんか?
確かに300のリセールバリューは異常ですが、それは世界中の窃盗団からも最高ランクの評価を受けていることと同義です。
- 300:
ガレージ保管必須。CANインベーダー対策など、セキュリティに50万円かけても盗まれるリスクと隣り合わせ。夜中に車の音がするたびに目が覚める生活です。 - 250:
こちらも人気ですが、300ほどの組織的な狙われ方は(現時点では)ややマシかもしれません。
「リセール益」と「安眠できる夜」。あなたはどちらを取りますか?
意外な盲点:サイズ感はほぼ同じ
「300はデカすぎて運転できないから250にする」という方がいますが、実は全幅はどちらも約1,980mmで同じです(オーバーフェンダー等の差はあれど)。
日本の駐車場枠(1,850mm〜1,900mm)に対しては、どちらも等しく「オーバーサイズ」であり、駐車の苦労は変わりません。「250なら小さいだろう」という期待は捨ててください。
サイズの違いや駐車場の問題については、下記の記事でも詳しく掘り下げています。

ランクル300と250、あなたはどちらを買うべきか?選び方の手順

迷いを断ち切るために、以下のフローチャートで自分に問いかけてみてください。
ランクル300を選ぶべき人
- 高速道路での移動が多い:
V6ツインターボの恩恵を最も受けます。 - 「一番いいヤツ」じゃないと気が済まない:
信号待ちで隣に300が並んだ時、250だと劣等感を感じるタイプの人。 - リセールバリュー(資産価値)を最優先:
歴史的に見ても、フラッグシップの残価率は異常です。 - 後部座席にゲストを乗せる:
2列目の快適性は圧倒的に300です。
300の競合となるレクサスLXとの違いや、どちらが買いかを比較したい方は下記も参考にしてください。
また、トヨタ車に限らず「ゲレンデヴァーゲン(Gクラス)」や「ディフェンダー」などの海外ライバル車とも比較したい方は、こちらの記事が役立ちます。
ランクル250を選ぶべき人
- 角張ったデザインに惚れた:
丸目や角目のクラシックな外観は250の特権です。 - ガシガシ使い倒したい:
300の豪華な内装は、泥汚れを躊躇させます。250の樹脂パーツ多めの内装は実用的です。 - 予算を抑えてカスタムに回したい:
浮いた300万円で、リフトアップやタイヤ交換をフルコースで行えます。 - 最新の安全装備が欲しい:
設計年次が新しい分、運転支援系(T-Connect等)は250の方が進化している部分もあります。
もし「予算」がネックで250を検討しているなら、いっそ「名車」と呼ばれる過去のモデル(100系や200系)の中古車を検討するのも賢い選択です。歴代モデルの違いは下記で比較しています。
大地編集長のワンポイントアドバイス

ここだけの話ですが、「妥協して250を買う」のは絶対にやめた方がいいです。
私の周りにも「300は納期が長いし高いから、とりあえずプラド(現250)で」と言って買った人が何人もいますが、彼らの多くは結局、街ですれ違うランクルを見て目で追っています。
300の「V6エンジンの咆哮」と「圧倒的な室内の静けさ」は、一度味わうと戻れません。あの300万円の差は、単なる装備代ではなく「優越感の対価」です。
逆に、「このカクカクした形こそが俺のランクルだ!」とデザインに惚れ込んでいるなら、迷わず250です。その場合、300の高級感なんて邪魔なだけですからね。
自分の「好き」の軸が、性能(高級感)にあるのか、スタイル(道具感)にあるのか。そこさえ間違えなければ、どちらも最高の相棒になりますよ。
あと、「買えるなら買う」のが鉄則です。250も300も、欲しくても「抽選外れ」「受注停止」で買えない期間の方が長いですからね。
ランクル300と250に関するよくある質問(Q&A)

まとめ:迷うなら『原点』へ。見栄を張るなら『頂点』へ。

ランクル300と250、どちらも世界に誇れる名車ですが、そのキャラクターは明確に異なります。
- ランクル300: 圧倒的なパワーと快適性を持つ、陸の王者。高級感とステータスを求めるならこちら。
- ランクル250: 質実剛健な道具感を極めた、頼れる相棒。デザインと使い勝手を重視するならこちら。
価格差300万円は、「エンジン性能」と「内装の仕立て」に明確に表れています。ここにお金を払えるかどうかが、分かれ道です。
決して安い買い物ではありません。カタログだけでなく、試乗や実車確認をして、あなたの肌感覚に合う方を選んでください。
傷一つないピカピカのランクルも素敵ですが、泥だらけのランクルはもっと美しい。どちらを選んでも、その先には素晴らしいカーライフが待っています。
なぜ私がここまで辛口な本音を書けるのか?私の過去の失敗と車歴は、下記のプロフィールで赤裸々に語っています。

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300と250、どちらを選ぶにしても「お得に手に入れる」ための戦略は必須です。そもそも新車は「抽選」や「受注停止」で買えないことが多いため、新古車や中古車市場も視野に入れるのが賢い選択です。
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