せっかく手に入れたランクル300。ノーマルのままでも十分威風堂々としていますが、隣に並んだプラドやハイラックスがリフトアップしているのを見ると、「もう少し車高を上げたい」という欲求が湧いてくるのは、オフローダーの性(さが)ですよね。
しかし、はっきり言います。300系のリフトアップは、過去のモデルとは比較にならないほど「難易度」と「リスク」が高いです。
安易に車高を上げると、自慢の電子制御サスペンション(AVS)がエラーを吐き、乗り心地は軽トラック以下になり、最悪の場合はディーラーへの入庫を拒否されます。そして何より、多くのオーナーが施工後に「立体駐車場に入れない」という生活上の不便さに絶望しています。
この記事では、ランクル300の快適な乗り味とAVS機能を維持したまま、法的にクリーンにリフトアップするための具体的な手法と、その費用対効果について、現場の視点から徹底的に解説します。
結論から言えば、「AVS対応キット」以外は選択肢に入れるべきではありません。 その理由を、財布の痛みと共にお伝えします。
ランクル300のリフトアップとは|AVS対応と費用の目安

ランクル300(特にZXやGR SPORT)の最大の特徴である「AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンションシステム)」。路面状況に応じて減衰力を自動調整するこの賢い機能を、リフトアップによって殺してしまうのは愚の骨頂です。
結論から言うと、現代のランクル300のリフトアップは「AVS対応キット」一択です。
AVS対応キットと非対応キットの違い
従来のリフトアップコイルを入れるだけでは、純正ショックアブソーバーのストローク位置がズレてしまい、AVSが正常に作動しなくなります。最悪の場合、警告灯が点灯しっぱなしになります。
そのため、JAOS(ジャオス)などの一流メーカーから出ている「AVS対応リフトアップスプリング」や、ハーネス延長キットを含むセットを選ぶ必要があります。
| 項目 | AVS対応キット | 非対応(安価なコイルのみ) |
|---|---|---|
| 部品費用 | 10万〜15万円前後 | 4万〜6万円前後 |
| 工賃(目安) | 5万〜8万円 | 4万〜6万円 |
| AVS機能 | 正常作動 | 機能不全・エラーリスク |
| 乗り心地 | 純正+α(しっかり感) | フワフワ・突き上げ感 |
| 総合評価 | 必須 | 論外 |
乗り心地の変化
「リフトアップすると乗り心地が悪くなる」というのは半分正解で半分間違いです。適切なバネレートで設計された高品質なキット(Ti-Wなど)であれば、むしろ純正の「少し柔らかすぎる」挙動が抑えられ、シャキッとした走りになります。逆に、安物で車高だけ上げると、常に揺すられるような不快な乗り味になります。
ランクル300リフトアップの不都合な真実|エーミングと構造変更の壁

ここからは、ショップやメーカーがあまり大声で言わない「毒」の部分、つまり維持費と手間の話をします。
エーミング調整という隠れコスト
車高が変わると、Toyota Safety Sense(衝突被害軽減ブレーキ等)のカメラやセンサーの視点がズレます。これを補正する「エーミング調整」が必須となります。
これをサボると、誤作動のリスクがあるだけでなく、特定整備認証工場以外では作業ができません。
エーミング調整費用: 2万〜4万円程度(店舗による)
2.1m制限との戦い(立体駐車場)
ランクル300(ZX)の全高は1925mm。ここから2インチ(約50mm)上げ、さらにタイヤ外径を大きくすると、全高は容易に2メートルを超えます。
都心の立体駐車場やショッピングモールの多くは「高さ制限2.1m」です。リフトアップした瞬間、家族と行く買い物先の駐車場に入れなくなる可能性が高いです。
構造変更と車検の「40mmルール」
指定部品(コイルバネ等)によるリフトアップで、車高の変化が40mm(4cm)以内であれば、基本的に車検はそのまま通ります。しかし、それを超えると「構造変更検査」が必要になります。
この手続きは平日陸運局に持ち込む必要があり、車検期間もそこからリセットされてしまいます。非常に面倒です。
知らないと車検に通らず、泣く泣くノーマルに戻す羽目になります。そうならないための構造変更の具体的な手続きと回避術については、下記の記事で徹底解説しています。
ランクル300リフトアップ時のタイヤサイズ限界と干渉

リフトアップの醍醐味は、より大きなタイヤを履けることです。しかし、ランクル300のホイールハウスは意外とシビアです。
2インチアップで履けるサイズ
- 275/55R20(純正): 外径 約810mm
- 285/55R20: 外径 約822mm(干渉なし・安全圏)
- 275/60R20(33インチ相当): 外径 約838mm(泥除け加工が必要な場合あり)
- 35×12.5R20(35インチ): 大幅な加工が必要。インナーフェンダーへの干渉、ボディマウント加工など、不可逆的な改造が必要になります。
見栄えだけで35インチを履こうとすると、ハンドルを目一杯切った時に「ゴリゴリ」と嫌な音が鳴り響き、精神衛生上よくありません。
タイヤサイズアップで一番のネックになるのが「巨大なタイヤをどこで買って、どうやって運ぶか」です。285サイズ以上のタイヤは想像を絶する重さで、個人宅への配送を断られることもあります。
賢いオーナーは、ネットで購入して「取付店へ直送」し、手ぶらで交換に行きます。
>>タイヤの購入と取付予約が同時にできるサービス【TIREHOOD(タイヤフッド)】
また、タイヤサイズアップとセットで考えるべきなのが「冬タイヤ問題」です。ブレーキ干渉で履けるホイールがない?そんな300系特有のスタッドレス事情については、下記の記事で詳しく解説しています。
大地編集長のワンポイントアドバイス

「たかが数センチ、されど数センチ」。
私の経験上、日常使いをするランクル300で「2インチ(約50mm)以上」のリフトアップは百害あって一利なしです。
以前、無理をして3インチアップ仕様のランクルに乗っていた知人がいましたが、彼は結局1年でノーマルに戻しました。理由はシンプル。「妻と子供が乗り降りできないとブチ切れたから」と「立駐に入れず、コインパーキング探しで毎回喧嘩になるから」でした。
ランクル300は、ただでさえ巨体です。これ以上大きくすることは、日本国内での「生活」を捨てることに等しい覚悟が必要です。やるなら、JAOSなどの信頼できるメーカーの「40mmアップコイル」に留め、タイヤで少し稼ぐ。これが、家族の平和を守りつつ、オフロード感も出せる唯一の解です。
悪いことは言いません。「ちょい上げ」が一番カッコよくて、一番賢いですよ。
ランクル300におすすめのAVS対応リフトアップ手法

失敗しないための具体的な手順をまとめます。
- 目的を定める: 「見た目だけ」なのか「オフロード走行」もするのか。
- キット選定: JAOS BATTLEZ リフトアップスプリング Ti-W など、AVS対応を明記しているものを選ぶ。
- タイヤ選定: 285/55R20 または 275/70R18 程度に抑える(干渉リスク回避)。
- ショップ選び: ランクル300の施工実績があり、エーミング調整まで自社または提携でできる店を選ぶ。
- 構造変更の確認: 40mmを超える場合は、構造変更の手続きをセットで依頼する。
「弟分である250やプラドはどうしているのか?」他車種の事例を知ることで、300系のカスタムの方向性もより明確になります。それぞれの最新リフトアップ事情は、下記の記事で比較・解説しています。

ランクル300リフトアップに関するよくある質問(Q&A)

まとめ:ランクル300リフトアップは迫力と実用性のバランスが命

ランクル300のリフトアップは、スタイルを激変させる最高のカスタムですが、同時に「快適性」や「利便性」を失うリスクと隣り合わせです。
- AVS対応キット(JAOS等)が必須条件。
- 上げ幅は40mm〜2インチ(約50mm)までが実用的な限界ライン。
- エーミング調整と構造変更の費用・手間を計算に入れる。
- タイヤサイズは欲張らず、干渉しないサイズを選ぶ。
これらを守れば、AVSの快適な乗り心地を維持したまま、他のランクル300とは一味違う、迫力あるオフロードスタイルを手に入れることができます。
「なぜ私がここまで辛口な本音を書けるのか?私の過去の失敗と車歴は、下記のプロフィールで赤裸々に語っています。」

もしこの記事が少しでも役に立ったら、SNSでシェアやメッセージをいただけると嬉しいです。次の記事を書く原動力になります!
| サービス | おすすめ理由 | リンク(公式サイト) |
|---|---|---|
| JAOS(ジャオス) | AVS対応キットのド定番。迷ったらこれを選べば間違いありません。 | >>Amazonで価格を見る >>楽天で価格を見る |
| TIREHOOD | 腰痛対策に必須。タイヤ購入と取付予約がスマホ一つで完結します。 | >>タイヤの購入と取付予約が同時にできるサービス【TIREHOOD(タイヤフッド)】 |
| オートウェイ | コストを抑えて迫力のタイヤを履きたい方へ。輸入タイヤの宝庫。 | >>株式会社オートウェイタイヤ通販 |
【免責事項】
※本記事で紹介しているカスタム(リフトアップ・タイヤサイズ変更)は、車両の個体差や検査員の判断により、車検非対応となる場合があります。
※メーカー保証の対象外となるリスクがあります。施工は必ず信頼できる専門店に相談し、自己責任で行ってください。
※記載している価格や仕様は執筆時点の情報です。
ランクル300のカスタム全体や、他のパーツ選びについて確認したい場合は、下記の記事に戻って全体の構想を練り直してみてください。


コメント